| |
| 1
|
収納型書架から展示型の書架へ
|
書架の前に立ったときだけでなく、横から見ても資料が存分にアピールするには、棚板の奥行きを浅くするだけでは不十分です。側板や中仕切りを、棚板よりぐっと狭くして、大部分の本の背が10ミリぐらいは見えるようにしてあります。
さらに、床置き書架の大部分には天板をつけず、最上段にその書架の花の役割をもたせ、また天板のあるものは、その天板を展示台として活用してもらうようにしています。
|
| 2
|
目の前の棚を展示用に
|
|
書架を展示型にするなら、目の前(実はやや下)の棚を展示に使うのが最も効果的だし、展示効果の高い本はA4など大判のグラフィックな本に多いから、A4も立つ棚高320の棚を4段目にもってきました。すべての書架をこれで統一できたのは最近ですが、これは画期的なことではないかと思っています。ちなみに、平湯モデルでは、どの書架も共通して、百科事典などのゼネラルなものを除く参考図書もこの段に集めることになっています。また、そこの分類に関連のあるものの実物やマスコットなども置きます。
|
| 3
|
すべての書架に迫ってくる力をもたせる
|
例えば9類を置く書架を、9類にはまれにしかないB5やA4のために、すべての棚高を高くすると、棚の中の上部にできる大きな空間のために、大切な書架が空虚な力のないものになるのと、背丈がやたらに高くなるので、棚高を低くおさえてあります。
それにさらに、ほど良い傾斜をつけることで、前に立ったときぐっと親しみやすく迫ってくる力のある書架になっています。
|
| 4
|
コンパクトでキャパの高い書架を
|
床置きの書架もほとんど視線をさえぎらぬ高さで、しかもぐっとスリムな平湯モデルの書架に配架した経験のある人は、見かけによらず本が沢山入ってしまうので驚かれるようです。2mの高書架でもせいぜい6段なのに、視線をさえぎらぬ高さでちゃんと5段あって、1段しか少なくないのですから当然のことです。貴重なスペースですから、できるかぎりコンパクトで、しかもアピール力を高くすることも書架づくりで大切なことです。
書架をスリムで低くしたことで分類などの書架表示がしにくくなったのをどうするかが、これからの研究課題です。
|
| 5
|
ブックエンドを追放して書架をすっきり
|
困りもののブックエンドをいくら改良してみても、ブックサポーターなどを考案してみても、あまり変わりばえがしないときは、何事もそうですが、大きく発想を転換することです。900ミリ1連の書架に、10ミリ厚の中仕切り板を、一般書で1枚、文庫本、絵本、大型本で2枚、雑誌のバック棚で3枚入れていることで、利用者にも図書館員にも、使い易くてほんとに気持ちのよい書架になっているはずです。
そのために書棚が固定になってしまいますが、固定になってもあまり大した不都合、不便がおきないよう、各段の寸法を考えることに、最も大きな時間をかけてきました。どうぞ使ってみてください。少なくとも、不都合、不便とは比べものにならないはるかに大きなメリットがあるはずです。
これで棚板がしなる心配も全くなくなりました。
|
| 6
|
横勝ちのデザインですっきりと力強く
|
|
側板、中仕切りをぐっとひっこめ、厚さも薄くし、一方厚い棚板を前に出し、丸みをつけて表情までつけているということは、しっかり「横勝ち」のデザインだということです。棚板の固定と相まって、全館が横勝ちで統一されてすっきりと迫ってくる力と美しさをつくり出します。立て差しの本ののる棚が全館に並ぶ図書館のデザインの基調としては横勝ちしかないと信じています。
|
| 7
|
一つひとつの家具に優しく迎え入れる表情を
|
|
図書館は、子どもも大人も年寄りも、そこで人間をとりもどし、生きる力を得るところです。物置棚のように無表情な書架や作業台のように四角四面なカウンターじゃ行く気にもならないでしょう。一つひとつ人を迎え入れるような表情をもった家具を、全体としてもまた人々を誘い入れて心をなごませるようなところになるように、レイアウトして、図書館を、学校でも、町の中でもいちばんすてきなところに生まれかわらせたいものです。
|
| 8
|
木のもつ暖かさやさしさを存分に
|
石油化学製品やスチールやコンクリートでなく木のもつ暖かさで図書館をつくり上げたい。その木も、その木そのものが暖かさ優しさをもつ樹種を選んで、色をつけたり、テカテカに塗って木でなくしてしまうようなことが決してないようにしています。棚板の見つけなどにつけた丸みがつくり出す不思議なほどのやさしさを確かめてください。
そして、木のすばらしさがほんとにわかる人なら、100年もかかって育つ家具材を、無垢で大量に使ったりもまたできないはずです。本が立ったら隠れてしまう棚の中にまで貴重な樹木はもったいなくて使えないはずです。
|
| 9
|
図書館には上物でなく本物を
|
|
図書館は、ホテルでも結婚式場でも社長室でもありません。いたずらざかりの子どもも野良帰りの人もやってくるところ、本や雑誌の出し入れも激しいところです。傷がついては困るような上物は無用ですし、店頭にある時の見せかけだけが上等で、時とともに見すぼらしくなるようなものはお断りです。人が本と出会ういちばん大切なところであり、また酷使されるところでもあるカウンターの天板や、書架のエッジなどには、しっかり無垢材が使ってあります。また、図書館には、シンプルな美しさや気品こそ大切で、重厚さもゴージャスさも装飾も無用です。
|
| 10
|
片づけて帰りたくなる書架なら最高
|
開館以来の書架をすべて平湯モデルにとりかえられた館のライブラリアンが言ってくれました。「子どもたちが、ジュータンの上にちらばった絵本などきれいに書架にもどして帰るようになりました。あの書架だと片づけるのが楽しいみたいですよ」と。ことばどおりにとっては喜びすぎでしょうが、私は、実はいわゆる「いれもの」というのは、おのずから、その中にきれいに収めたくなるようにつくるのが究極だと思いつづけてきましたから、この話を聞いたときにほんとに嬉しく思いました。中仕切りを入れているのも、それぞれにほどよい傾斜をつけるのも、ブックエンドやサポーターを追放したいのも、利用者が利用しやすく、図書館員が仕事がしやすいようにということですが、それはそのまま、利用者が使った本をおのずから片づけたくなるような、片づけること自体が楽しいような書架のことで、そういうものをつくりたいと思いつづけてつくってきたからです。
必要な奥行きの倍もある書架を、壁や床にモルタルで塗り固めてしまって、全国の学校司書たちを半世紀ものあいだ手も足も出せないようにしているひどい状況に立ち向かう元気を与えてくれるのもこんな励ましです。
自画自賛で恐縮です。現場の率直なご意見など聞かせていただきながら、ここにあげた「10の特長」を本物にしていけたらと思っています。記:平湯文夫
|
| |