特別支援学校
図書館つくりかた

はじめの一歩(いっぽ)

いきなり図書館担当に任命されてお困りの先生方、
どこから手を付ければ…途方に暮れていませんか?
「まずはこれだけやればOK!」
ということをまとめてみました♪

監修:赤木かん子

はじめまして。赤木かん子です。
本の紹介が仕事である私が、ひょんなことから学校図書館の改装にたずさわって早20年。
子どもたちにとっていごこちの良い場所をつくるために今も奔走中です。
2023年7月28日

■プロフィール:児童文学評論家。長野県松本市生まれ、千葉育ち。法政大学英文学科卒業。1984年に、子どもの頃に読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介・書評などで活躍している。
■公式WEBサイト:赤木かん子 オフィシャルサイト

ステップ1 旧本の整理

いまある本を整理しましょう。

1.学校の中にある本を集めます。

まずは、学校中のあらゆる本を集めてきましょう。

2.使える本を選びます。

下記のリストにあるような、修復できなかったり、情報が古くなってしまっている本を抜いて、図書館の本として使える本を残します。

残念ながら使えない本リスト


  • 壊れている本
  • 背中が色褪せて題名が読めないもの(表紙カバーを取ってしまえば使えるものは、取って使います。※1)
  • 内容がいまと違ってしまっているもの
     <例>平成の大合併以前の日本地図など、データが変わってしまったもの
  • それぞれの学会が新しい説を承認したもの
     <例>羽毛恐竜が載ってない恐竜の本
     <例>冥王星を惑星と書いてある宇宙の本→2006年以降、冥王星は惑星から準惑星に変わりました
  • イラストが古くなってしまったもの

  • ※1,表紙カバーをとって使う場合には、そのカバーに表記してあるISBNの部分は切り取って、ブックコートフィルム等を使って本体に貼り付けてください(セロハンテープは後から劣化するので使うのは避けましょう)。ISBNがないと、登録するときに面倒ですから。

3.残りの本はとりあず今は、

1)段ボールに入れる
2)どこかの棚に入れる

などして、置いておきます。

ワンポイントアドバイスワンポイントアドバイス

本を保護するカバーをかけよう

ブックコートフィルム(ブッカー)というのは、公共図書館の本にはかかっている透明なビニールのカバーのことです。特別支援学校は、これをしないと本が保ちませんのでかけたいのですが、最初の一歩としては、今ある本にはかけないでおきましょう。今年買う新刊からはかけたほうがよいです。

ステップ2 本棚をつくる

図書館用の部屋がない場合

どのくらい本棚が必要か、は、どのくらい本があるか、によりますが、ここはとりあえず、はじめの⼀歩として、図書館⽤の部屋もない、ボックス並べてやるしかないなぁ、というレベルのお話をします。

1.本棚だけでも確保しよう

低い2段の書架を使うやりかたです。
私がいつも使うのは、IKEAのビリーという商品の、低段、⽩です。
それを5本並べると、10マスの棚ができます。
その10マスに、この後のステップ4「分類する」で解説する棚サインをつけて、本を⼊れるとかなり整理できるはずです。

2.カラーボックスが、お安くて使えます

もっと安くあげるのなら、ホームセンターで売っているカラーボックス、
これを横にして、2段に重ねて置きます(必ず連結金具を使って、上下を⽌めてください)。
なぜ横にするかというと、タテに置くと絵本は⼊りませんが、横に置けば⼊るからです。

カラーボックスは6本買って、重ねて置くと18マスできます。

横に倒して並べたカラーボックス

※図書館も図書コーナーもない場合、
こういう小さい図書館からも図書館は始められます。

ワンポイントアドバイスワンポイントアドバイス

どの本にも合うのは白い本棚です

※本棚(書架)は茶⾊の⽊製、と思っていらっしゃるかたは多いのですが、木製の書架は棚板が動かないものが多く、今のA4サイズの本は入りません。また、赤や黒や茶色の本が沈んでしまいます。どの色の本も一番あざやかに魅せてくれるのは白なのです。

白い本棚

ステップ3 登録する

システムへの登録をしましょう

貸出システムを利用する場合は登録作業が必要です。

コンピューター貸し出しをやっていないところは、いままでのやり方で。コンピューター貸し出しをはじめるところは、買ったソフトによって入れ方が違いますので、取り扱い説明書をお読みください。

【2023年度東京都の特別支援学校用ソフトの入れ方】

準備中です。

ステップ4 分類する

分類はやりだすと
むずかしく、細かいので、
最初の1歩としては、
絵本だけの分類作業をしましょう。

はじめの一歩としては、「小さい絵本」と「作者の分かる物語絵本」だけ分類して本棚に入れるところまでやります。それ以外の本は段ボールに入れてよけておきましょう。この次のステップで詳しく説明していきます。
同時に棚サインと、分類シールを貼っていきますが、色シールで分類しないことが大事です。

分類サインのついた本棚
 

それでは分類してみましょう

ワンポイント

絵本に分類する本は、”作者がはっきりしている物語”だと決めてそれ以外のものはそれぞれのジャンルに⼊れるとわかりやすくなります。


絵本は昔は物語しかありませんでした。でも今の絵本にはさまざまなジャンルのものが混ざっています。欧⽶にはストーリーマンガがないので、今の⽇本がコナンやドラえもんでやってるような、勉強⽤のマンガの本がありません。なので、それを全部絵本でやるからです。ここ何年か、アメリカは伝記絵本ばかり作っています。なので、絵本は”誰が作ったかわかっている物語”だと決め、それ以外のものはそれぞれのジャンルに⼊れるとわかりやすくなります。

①まずはサイズの小さい絵本を分類します。

“ピーター・ラビット”のような小さな絵本を普通の絵本と一緒に棚に入れると後ろに回って見えなくなってしまうので、小さい絵本は別におきます。

小さな本のイラスト分類シール 小さな本のイラスト分類シール

②「作者のはっきりとわかる物語の絵本」をタイトルのあいうえお順で分類します。

作者のはっきりとわかる物語の絵本をタイトルのあいうえお順で並べていきます。分類する際には、「あ行」もしくは「あ」「い」「う」…のように、その分量によって大きく分けるか、細かく分けるか判断します。

※シリーズものは各タイトルでなく、シリーズ名で。たとえば「⼗四ひき」のシリーズは「さ⾏」へ。

あ~やらわのイラスト分類シール あ~やらわのイラスト分類シール
絵本の分類は、正規には絵描きさんの名前のあいうえお順なのですが、特別支援学校の場合、それだと生徒が探しにくいのです。 “ぐりとぐら”を“山脇百合子”さんが描いたのだから、や、のところを探そう、は難しい。“ぐりとぐら”はやはり、ぐ、で探そうとするでしょう。シリーズものはシリーズ名の頭文字で分類します。 14ひきのシリーズは、じ、なのでサ行になります。

解説いたします。

絵本が⼤量にある公共図書館で、たとえば「あ⾏」だけで5段ある、というところなら、「あ⾏」だけの棚サインでは本が多すぎて探せなくなりますので、「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、の棚サインを貼って探しやすくしますが、、「あ⾏」で2段、までならば、「あ⾏」、「か⾏」、でわけるだけで事⾜ります。

⾊シールで分類しないことが⼤事です。

    ⾊シールは
  • ・数がたくさんないので、すぐ⾏き詰まります。
  • ・買ったときに微妙に⾊が違いますので、同じ⾚を貼っていても、同じ意味なのか、違う意味なのか、わからなくなりがちです。
  • ・⾊には意味がないので、⾚はあ⾏、群⻘はか⾏、のように覚えないと使えません。覚えないと使えないものは使いにくいです。

ワンポイント

サインにはイラストのモノを使ってあげると、子どもたちが自分で本棚に戻しやすいので、おすすめです。


棚サインと、分類シールのアップ

ステップ2で作った本棚に棚サインを貼り、①と②で分類した本の背表紙に分類シールを貼って並べます。

ここまでが「はじめの一歩」です。



本格的な分類やコーナーづくりについては只今準備中です。

実例:図書館の改装のおしごと

準備中です。

分類というものは

⽇本の学校図書館と公共図書館は、⽇本⼗進分類法という、0から9までの⼗個の数字を使うやりかたで、本を分類しています。
たとえば913(これはきゅういちさん、と読みます。きゅうひゃくじゅうさんばんめ、という意味ではないからです)は

9 ⽂学
1 ⽇本語
3 ⼩説

という、⾔葉を数字におきかえた記号で“⽇本語で書かれた⼩説”を意味します。

そうしてこれは、近くの公共図書館のサイトで本を探せば、今⾃分の⼿元にある本にどんな記号をつけたらいいのか、あらかたはわかります。
あらかたは、というのは、特別⽀援学校でしか必要でない分類もあるからです。

たとえば“おとのでるほん”や“さわれるほん”などは、ほかではあまり必要がないでしょう。ただ、そこま でやると本格的な図書館になり、最初の⼀歩、ではなくなるため、ここでは絵本の分類だけ、ご覧ください。

絵本はもともとの分類が「美術」から始まっている!

絵本はもともと分類が「美術」で、「美術」の場合は、作品名ではなく、作者名(絵画なら絵描きさんの名前)で本を分けているために、つまりレンブラントの作品は「レンブラント」、ピカソの作品は「ピカソ」などとしているために、公共図書館の分類では、「絵本」は絵描きさんの名前のあいうえお順になっているのが普通です。けれどもこれだと具合が悪いのです。
なぜかというと、絵描きさんが有名な場合はいいのですが、⽂章を書いてる⼈のほうが有名な場合、⾒つけにくくなるからです。

絵本は
・絵描きさんのあいうえお順
・作家さんのあいうえお順
・タイトル順
・出版社のあいうえお順

など、⾊々な分け⽅がありますが、どれも⼀⻑⼀短があり、これしかない!とはいえません。
でも、そのなかで⼀番マシなのは、タイトル順だと思います。なぜなら⼦どもたちは、「ぐりとぐら」の絵本は、「ぐ」、で探すからです。絵描きさんである、⼭脇百合⼦さんの、「や」、では探しません。作家さんである中川李枝⼦さんの、「な」、でも探さないでしょう。⼦どもたちにとって、「ぐりとぐら」は、誰かが書いたものではなく、⽣きている実在しているねずみだからです。

イラスト分類シール誕生秘話

絵本は、⾊シールが使えなかったので、覚えなくても⼀⽬⾒て使えるものがないか、と考え、果物のマークを貼ることにしました。

あ⾏ ⾚いりんご
か⾏ キーウィ
さ⾏ さくらんぼ
た⾏ デラウェア
な⾏ なし
は⾏ パイナップル
ま⾏ もも
やらわ メロン

なぜ太った果物にしたかというと、はじめはなかに、「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」、を書き込むつもりだったからです。
でもやってみて、2段までなら、そのなかを分類しないほうが楽で早いことに気がつきました。
公共図書館なら、あ⾏だけで10段くらい絵本があり、それだけあると、やはりもう1段階分けないと使いにくいです。本が探せません。
でも、ほとんどの学校図書館は、あ⾏は1段、多くても2段、ですむのです。分類の基礎は困らなくなったらのやめる、で、困らなくなったのに分類し続けると逆に煩雑になり、わからなくなっていきます。なので学校はあ⾏、か⾏、までしか分けないほうが使いやすいと思います。

「やらわ」、がなぜメロンかというと、この⾏に果物がなく、「できれば丸っこい果物がいいんだけど、なにがいい?」と四年⽣のグループに聞いたところ、全員、「それならメロンがいいよ」、といったからです。「それにメロンの最後は、「ン」、だから、ちょうどいいでしょ」、というご意⾒でしたので、なるほど、と従いました。

イラストマークにすると、⽂字が読めない⼈でも使えるし、読める⼈でもいちいち読むよりずっと早く返すことができます。
分類は⼆歳から七歳くらいまでの⼈たちの遊びです。
なので、年令が下の⼈たちのほうが分類の感覚は鋭く、適格で、間違ったイラストマークが混じっていると、嫌がって抜いてくれるので、本棚が整います。
恐⻯のなかに、カニがいるのは嫌なのだそうです。

あるとき、「考古学」、をなんて説明しよう、と考えて、できなかったことがありました。
ところが、ある⼦が、考古学(ミイラ男が張ってあります)の棚をじっと⾒つめたあと、⼿に持っていた「縄⽂時代」の本を、これもミイラ男じゃないの?と聞いてきました。それには歴史のイラストが貼ってあったのですが、あそこにある本とこの本はおなじだよね、というのです。それは歴史セットで最初の2冊だけ考古学だったのを、誰かが間違って貼ったのでした。で、そのときに、⾔葉を教えて概念をいれることは難しいけど、概念をいれて、それに⾔葉をつける(……このジャンルを考古学、といいます。ね、古いことを考える、って書くでしょう?……)のはできることに気がつきました。 そうして概念を⼊れるには、同じジャンルの本を並べた棚を作ればいいだけなのです。⼦どもたちは、ミイラやピラミッドが並んでいる棚を⾒て、考古学の概念を理解してくれたのです。
⼩さい⼈たちの分類感覚の鋭さにはいつも感⼼させられます。

このあとも随時更新予定です

・特別支援学校の図書館の蔵書としておすすめの「本のリスト」を準備中です。